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海外の高級ブランドやホテルなど、意匠性の高いパネル塗装なども手掛ける野村アーテック。本連載では野村アーテックでさまざまなプロジェクトをプロデュースする専務取締役の野村英起と、内装、建築、デザインの分野で、第一線で活躍する気鋭のアーティストとの対談の模様をお伝えします。独自の素材である「アートコーティングパネル」をテーマに、対談を通して見えてくるデザイン塗装にかける情熱や想いをぜひ感じてください。


野村アーテック×みぞぶちかずま(オデッセイオブイスカ代表/建築家)

「鏡面加工の絶妙な技術に加えて、
アーティストの創作意欲をくすぐる“遊びの可能性”がある」

左:野村英起(野村アーテック)、中央:溝渕一真氏(オデッセイ オブ イスカ代表/建築家)、右:進行役の佐伯周一氏(デザイナー) 取材協力:「フィアット/アルファロメオ 松濤」

ナビゲーターにludogram代表・佐伯周一さんをお招きしてお伝えする野村アーテック連載対談企画の第1回のゲストは、「フィアット/アルファロメオ 松濤」の壁面にアートコーティングパネルを採用した、オデッセイ オブ イスカ代表のみぞぶち かずまさんです。アルミ塗装建材「アートコーティングパネル」は、クリエイターにどのような空間表現を可能とさせるのか。対談を通して見えてくる、当事者たちの情熱や想いをぜひ感じてください。

●みぞぶち かずま
溝渕一真/株式会社オデッセイ オブ イスカ代表。一級建築士。早稲田大学大学院都市計画(吉阪研究室)修了。菊竹清訓建築設計事務所などを経て、1987年にオデッセイ オブ イスカを設立。住宅、商業建築、公共建築をはじめ、都市計画や公園計画、街づくりデザインなど、多岐に渡って設計活動を展開。主な仕事に、世田谷公衆トイレ、小田急線喜多見駅、伊香保温泉石段街修景など。
●佐伯周一(ナビゲーター)
さえき・しゅういち/株式会社ludogram代表取締役。デザイナー。東洋大学理工学部建築学科卒業後、オデッセイ オブ イスカを経て、2011年に独立。株式会社ludogramを立ち上げる。住宅建築、商業建築、公共建築の企画・設計・監理や、デザインコンサルタント業務、プロダクト製品のデザイン企画・開発などを手がける。

初めてサンプル塗装を見た時、
心がときめきました

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佐伯 今年3月にオープンした「フィアット/アルファロメオ 松濤」の内装に、野村アーテックさんのアートコーティングパネルを使用するに当たり、みぞぶちさんと野村アーテックさんでどんなやり取りがあったのか。

また、みぞぶちさんがアートコーティングパネルに感じた可能性などについても伺っていけたらと思っています。まず、みぞぶちさんのほうから、アートコーティングパネルを初めて見た時の印象について伺わせていただけますか。

みぞぶち アートコーティングパネルのことは、佐伯さんから教えてもらったんですよね。野村アーテックさんが手がけられたルイ・ヴィトン銀座並木通り店のパネル塗装を見に行って、非常に美しいと感じました。それで、「フィアット/アルファロメオ 松濤」の壁面に採用するに当たり、野村アーテックさんのホームページを見ながら僕らなりに作戦を練った(笑)。

というのも、ここに設置するパネルは、遠くから見た時は赤一色に見えるけれど、近付くと「FIAT」「ALFA ROMEO」のロゴが入っていることがわかるというストーリーを考えていたんです。エジプトの遺跡の壁面に記されているヒエログリフのような感じで見せることができたらうれしいなと思っていたんですよ。

野村 初めて弊社の工場で打ち合わせをさせていただいた時、私たちがこれまで製作したサンプルを見ていただきながら、みぞぶちさんのイメージを確認させていただきましたよね。

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みぞぶち その時、このテスト塗装を渡されて、びっくりしたのを覚えています。ロゴの文字は、薄い黒、グレー、地色より濃い赤などを使って浮かび上がるようにするものだと思っていましたが、「抜き文字にしてパールを敷いたほうがきれいです」と提案してくださって。本当にきれいで、心がときめきました。

その後、パネルで使う赤色の調整などで何度がやり取りをさせていただきましたが、設計者の意図を汲み取ってくれるというか、単純に言われたから作るのではなく、提案があって、それに対してリアクションするというやり取りができたことが、非常にありがたかったです。

野村 ありがとうございます。デザイナーや設計者の方から言われたことだけやっていても、我々も成長しませんから、どう見せれば美しくなるか、長年のノウハウをもとにイメージに近づけることができるよう、毎回ご提案させていただいているんです。

今回のパネルは、アルミ塗装の表面にパールを使ったシルクスクリーン印刷を施し、さらに鏡面加工で艶やかな光沢を出しました。初めの打ち合わせでみぞぶちさんに見ていただいたサンプルをもとに、色や表現方法、仕上げ感などを、イメージ通りの具体的な表現に落とし込んでいくお手伝いをさせていただきました。

アートコーティングパネルの
鏡面加工には絶妙な魅力がある

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佐伯 いまお話にあったように、野村アーテックさんには、長年培われてきた職人さんたちの技術と最新のテクノロジーを融合して、芸術性の高い塗装、新しい表現技法を探していくというスタンスがあると思います。

そうした点が、オリジナルのものを作ろうとしているデザイナーや設計者としてはうれしいところなんですよね。ところで、みぞぶちさんは今回のパネルの鏡面加工について、どんな印象を受けられましたか。

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みぞぶち そもそもこの空間は天井を高く見せたいと考えていましたから、天井付近に鏡を多用しているのですが、壁面に鏡面加工のパネルを設置できたことで、さらなる奥行き感を演出できたと思っています。単純に鏡を使ってしまうと自分の顔やスタイルがすべて映り込んでしまい、恥ずかしいと感じることがありますが、このパネルは映り込みはするけれど、そうした点があまり気にならない絶妙な魅力があるんですよね。

佐伯 たしかにそうですよね。では、施工時に特に注意を払ったことはありますか?

みぞぶち パネルの厚さが2mmとはいえ、素材がアルミである程度固さもありますから、家庭の台所などで使われるデリケートな木製の化粧仕上げ材よりも安心して使える材料だと感じました。カッティングに関しては慎重にやらなければいけないだろうと、恐る恐るやっていたのですが、思いのほかスムーズにできましたね。

野村 施工時には寸法に合わせて切断する作業が必要ですから、独自の塗膜により、切断や穴開け加工をしやすいように仕上げているんです。美しく仕上げても、施工しにくかったら使っていただけませんから、パネル自体の素材や塗料も吟味して実験を重ね、改善していきました。

みぞぶち それでいうと、施工中のフォローアップも非常に良くしていただきました。実際のレイアウトはこちらで行ったのですが、野村アーテックさんのほうから「このパネルが2mmズレています」などと指摘していただいて…(笑)。そうしたチェックまで細かくしていただけるとは思っていませんでしたし、我々もパーフェクトを目指していますから、非常にうれしかったですね。

野村 施工が完了するまでは我々の責任もありますので、しっかりとやるように心がけています。

このパネルにしかできない
遊びの可能性を感じる

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佐伯 今回のプロジェクトを終えて、今後、アートコーティングパネルでこんなことをやってみたいと思われたことはありますか。

みぞぶち 工場で見せていただいたサンプルの中に、不思議な奥行き感のあるパネルがあったんですが、そうしたパネルを使ったら、相当面白いことになると感じました。建築って、我々設計者も驚きたいし、お客様にもドキドキしていただくことが大切だと思うんです。ですから、例えば小学校のような子どもがいる空間にそうしたパネルを設置して、子どもが「なんだこれ?」と発見するとか、遊び心のある空間で使うことができたらいいなと考えています。

アートではオプティカル・アートがありますが、アートコーティングパネルでしかできない“遊びの可能性”を非常に感じましたね。
野村 パネル塗装とひと言でいっても、手作業による研磨や特殊印刷など、さまざまな手法を組み合わせることで、私たちも想像がつかないような効果が生まれてくることがあるんです。デザイナーや設計者の方から「こういうことができるか?」と言われたことに対して、知恵を絞っていく中で、副産物として思わぬものが生まれることもあります。私たちもそれを楽しみながら作業をしているんです。

職人たちが、仕事の空き時間にいままでに試したことのない技法を使って、何かできないかと模索していた時期もありまして、そこで生まれた技術を新たな案件で活用させていただくこともあります。

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みぞぶち そうしたノウハウをたくさん持っていると、野村アーテックさんと設計者側が双方向で、ある意味遊びながらコラボレーションできる面白さもありますよね。

佐伯 設計者やデザイナーとしても、塗り絵のようにパネルを選ぶのではなくて、その空間に新たな効果を加えることができるアートコーティングパネルは、これまでの建材とは違った意味でさまざまな可能性を感じますよね。

みぞぶちさんには、これからもアートコーティングパネルを活用して、魅力的な空間をデザインしていただけるとうれしいです。本日はありがとうございました。



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